なぜインナーチャイルドを癒すのか?
「子供は自分を無条件に受け入れてくれる親が必要であり、自分が必要とされていることを確信することで、自分を信じ、他人を信頼することができるようになる。」というのは、”インナーチャイルド、本当のあなたを取り戻す方法”を書いた、ジョン・ブラッドショーの言葉です。
「インナーチャイルド:本当のあなたを取り戻す方法(NHK出版)」
多くの子供が親の愛を得るために感情を抑制し、怒りやこころの傷をかかえたまま大人になるそうです。
そして、無視され傷ついた過去の内なる子供、つまり、インナーチャイルドは、わたしたちの精神的苦痛の根源になると、ブラッドショーは言っています。
傷ついたインナーチャイルドのデメリット
傷ついたインナーチャイルドをそのままにしておくと、成長が抑えられ、怒り、傷心を抱えた大人になると言われており、大人となっているあなたの行動を制限しています。
このことを、ブラッドショーは、「汚染(Contaminate)」と呼び、以下のように大きなデメリットになっていると言っています。
◆共依存(Co-Dependence)
共依存とは他人との関係に過剰に依存している状態のことを言います。よくあるのは、人を世話することへの依存などであり、相手から依存されることで自分の価値を見出すというものです。
◆犯罪行動(Offender Behaviour)
暴力性のある人格は傷ついたインナーチャイルドから来ているとブラッドショーは言っています。
◆自己愛的障害(Narcissistic Disorder)
自己愛が満たされていないインナーチャイルドは、人から愛されることや注目されることや同情されることに対するどん欲な欲求で自分を汚染しています。
◆信頼問題(Trust Issue)
インナーチャイルドが傷ついたままであると、疑い深くなるというもの。世の中は危険な場所で、敵だらけで、予測がつかず、自分を守らなければならないと思い込むようになります。なので、すべてをコントロールしようとします。
◆行動化(Acting Out)
傷ついたインナーチャイルドの凍結された情動が、悲哀を健康的に表現できないので、異常行動で表されるというもの。
◆魔術的な思い込み(Magical Beliefs)
「よい大学に入ればすべてがバラ色」「お金があればすべては幸せ」「恋人に捨てられたら生きていけない」など、このような思い込みは魔術的なものです。これらは自分の行動ではなく、ある出来事や他人が現実を変えてくれるのだと思い込むことになります。
◆親交の機能障害(Intimacy Dysfunctions)
見捨てられる恐怖と、呑み込まれる恐怖、この二つの両極端を行ったり来たりします。他人に征服されることを恐れて孤立したり、一人ぼっちになることを恐れて破壊的な結びつきから逃げ出しません。この二つの両極端を行ったり来たりします。
◆しつけられていない行動(Nondisciplined Behaviour)
しつけられていないインナーチャイルドは反抗的でわがままで衝動的に行動しますし、反対に過度にしつけられた子供は強迫的で過度に抑制的で恥と罪の意識でいっぱいです。インナーチャイルドが傷ついていれば、しつけられていない行動と過度にしつけられた行動の両極端の間を揺れ動きます。
◆中毒、強迫行動(Addictive/Compulsive Behaviours)
アルコールなどの依存症。
◆思考歪曲(Thought Distortions)
将来を必要以上に恐れるなど、傷ついたインナーチャイルドは歪曲化した思考を持ちがちになる、というもの。
◆空虚(Emptiness)
傷ついたインナーチャイルドは空虚感という軽い抑うつ感で、生活を汚染するというもの。
傷ついたインナーチャイルドを再生するメリット
私たちは自分の力でこのチャイルドを再生し、本来の自然の子供を取り戻すことができます。
そして、傷ついたインナーチャイルドを癒す事で、以下のメリットを享受することができるようになります。
自分自身でインナーチャイルドを癒すテクニック
瞑想の中でインナーチャイルドに会いに行く方法
この方法を使用する場合、あなたが生まれたときである、「乳児期」、そして、保育園や幼稚園に通っていた「学童前期」、小学校に通っていた「学童期」に別け、それぞれの時期に対して別々に以下のステップを行ってください。
ステップ1:
幼少期のあなた自身を思い浮かべてください。写真などがあればそれを眺めるのも良いでしょう。そして、その時期に起こったこと、済んでいた家、通っていた保育園、幼稚園、学校などを思い浮かべてください。
ステップ2:
目を閉じてください。そして、その子が家を出て、どこかに行くところをイメージします。家を出て一人で遊んでいるようなシーンが良いでしょう。そして、あなた自身もイメージの中に入ってください。そして、その子供に「こんにちは」と話しかけましょう。その子供はどんな表情であなたのことを見ていますか?
ステップ3:
その子に、あなたは未来から来たことを伝えてください。そして、子供に、あなたは子供にとって、最も信頼できる人であることを伝えてください。
ステップ4:
子供に対して、「あなたはわたしによって守られている」ことを伝えてください。そして、必要なときはいつでも一緒にいれることを伝えてください。寂しい時、困った時には、いつでもすぐにその子供のそばに行って会いにくることができて、どんな相談にも乗ることができるので、安心できることを約束してください。そして、子供をしっかり抱きしめて、ありったけの愛情を注いてください。
ステップ5:
今度は、あなたの意識を子供の中に入れて、子供の立場で抱きしめられている感覚を感じてください。そして、愛情をたっぷり受け取ってください。たっぷり愛情を受け取ることができ、守られている感覚をしっかり感じ取りながらイメージから出てきましょう。
インナーチャイルドに手紙を書く方法
ステップ1:
大人のあなたから、子供のあなたに手紙を書いてください。あなたから当時の子供に伝えたいことを書きます。長く書く必要はありませんので、伝えたいことを簡潔に書いてください。特に、いつも一緒にいたいし、気にかけているし、愛していることをつたてください。子供に手紙を書くときは、必ず利き手で書いてください。
ステップ2:
子供の両親にも手紙を書いてください。その子供をどのように扱ってほしいのか、手紙を書きます。
ステップ3:
ステップ1で書いた手紙を子供になりきって読んでください。そして、愛されていて守られている感情を感じながら、利き手でない手で返答の手紙を書いてください。
ヒプノセラピーでインナーチャイルドを癒すテクニック
ヒプノセラピーを使ってインナーチャイルドを癒すメリットは、通常の意識ではわからない問題の根源となっている過去の出来事にピンポイントで退行し、傷ついているインナーチャイルドを癒すことができることです。
上記において説明した、催眠を使わない従来の方法だと、過去を「乳児期」、「学童前期」、「学童期」に別け、あらかじめ戻るシーンをランダムに決めてから退行がはじまります。
しかしこの場合、戻るシーンと現在の問題、特に、今現在の自分を悩ませている、怒り、悲しみ、恐怖、傷心、罪悪感、といったネガティブな感情との関連性を探るために退行しているわけはありません。
どちらかと言えば適当に戻るターゲットを設定し、過去に戻り、インナーチャイルドを抱きしめるというワークになります。
しかし催眠のテクニックである、「感情の橋」を使うと、現在の問題と、その問題の原因となっている過去のシーンにピンポイントで正確に退行し、傷ついたインナーチャイルドを癒すことができます。
よって、現在抱えている心的な問題を比較的早く解決するための効果的なセラピーを提供することができます。
例えばあなたがなぜか男性に対して不信感がある。そして、顕在意識レベルではその原因がわからない。
このような場合、催眠を使わない一般的なインナーチャイルドセラピーであれば、どの過去を指定して戻ればいいのかわかりません。
しかし催眠を使ったインナーチャイルドの癒しの場合は、クライアントを催眠にいれてから、「その不信感の原因となっている幼いころに戻れ」と命令するだけで、現在の問題と関連性のある過去のシーンにピンポイントで戻ることができます。
この場合、どのシーンが直接原因になっているのか意識のレベルであらかじめわからなくても、
潜在意識がわかって正確に原因となっている記憶に連れて行ってくれます
そしてそのシーンの中にいる傷ついたインナーチャイルドを癒す事ができるので、より効果的なセラピーを提供することができます。
ヒプノセラピーを使ってインナーチャイルを癒す方法は、たくさんあるのですが、その中の3つのテクニックを紹介しましょう。
催眠下でインナーチャイルドを抱きしめる
これはもっともシンプルな方法であり、催眠を使わないインナーチャイルドの癒しテクニックとまったく同じものです。深い催眠下で体験している過去のイメージに、大人となっているクライアントが入ってゆきインナーチャイルドと対面してから抱きしめます。そして知覚位置の変更テクニックを使って、意識を大人、子供、大人と行き来させ、お互いに会話をさせることでインナーチャイルドを癒します。
原因となっているシーンの5分前に退行させる。
感情の橋のテクニックを使い、現在の問題の原因となっている過去に戻った後、そこで起こった出来事を確認した後に、その原因となったシーンからさらに10分前まで退行させます。
10分までにはまだその出来事が起こっていませんので、当然、インナーチャイルドもまだ傷ついていません。そこで、大人のあなたがイメージの中に入ってゆき、チャイルドに”今から何が起こるのか、そして、どう対処すればいいのか”を教えます。これは、出来事を再度作り変えるのではなく、起こったことは起こったことで仕方がないので、あらかじめ起こることを教えておきます。さらに、そのシーンをあなたが後ろについていて守られている状態で体験するように促します。
すると、トラウマになっているその出来事自体は変わりませんが、そこにあった抑圧された感情が解放され、出来事を肯定的な視点で眺めることができるようになります。そして、その体験から肯定的な学びを得て、これから先の人生が前向きになるような暗示を与えます。
インナーチャイルドを手のひらに
このテクニックは、催眠下において退行して傷ついたインナーチャイルドを探した後に、イメージの中でインナーチャイルドを小さくして自分の手のひらの上に置きます。そしてインナーチャイルドに慰めの言葉をかけたり抱きしめたるして癒した後に、あなたの胸の中の愛情に満ち溢れたところにインナーチャイルドを戻します。
そして、「これからはずっと守られている」という暗示を与えます。
その後で、知覚ポジションの変更を行いあなたの胸の中で守られているインナーチルドに戻り、その感覚をしっかり体験させることで傷を癒すというものです。